民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律について(相続法の改正)

平成30年7月6日、民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律が成立しました(平成30年7月13日公布)。

その内、今回は遺産分割前の払戻し制度について紹介します。

 

改正前の法律は遺産分割前に相続人が被相続人の預金を引き出すことはできませんでしたし、預貯金を引き出すためには家庭裁判所の判断を受ける必要がありました。

今回の法律改正で家庭裁判所の判断を受けることなく単独で金融機関から預貯金を引き出すことができるようになりました。

 

遺産分割前の払戻し制度の創設等の内容

この制度の創設等については大別すると家庭裁判所の判断を経ないで預貯金の払戻しを認める方策(後記ア)と

家事事件手続法の保全処分の要件を緩和する方策(後記イ)とに分かれます。

それぞれの方策の要点は以下のとおりです。

 

要点

ア 家庭裁判所の判断を経ないで,預貯金の払戻しを認める方策

各共同相続人は、遺産に属する預貯金債権のうち、口座ごとに以下の計算式で求められる額(ただし同一の金融機関に対する権利行使は法務省令で定める額(150万円)を限度とする。)までについては他の共同相続人の同意がなくても単独で払戻しをすることができる。

【計算式】

単独で払戻しをすることができる額=(相続開始時の預貯金債権の額)×(3分の1)×(当該払戻しを求める共同相続人の法定相続分)

 

イ 家事事件手続法の保全処分の要件を緩和する方策

預貯金債権の仮分割の仮処分については家事事件手続法第200条第2項の要件(事件の関係人の急迫の危険の防止の必要があること)を緩和することとし、家庭裁判所は遺産の分割の審判又は調停の申立てがあった場合において相続財産に属する債務の弁済、相続人の生活費の支弁その他の事情により遺産に属する預貯金債権を行使する必要があると認めるときは他の共同相続人の利益を害しない限り申立てにより遺産に属する特定の預貯金債権の全部又は一部を仮に取得させることができることにする。

相続された預貯金債権の払戻しを認める制度については法務省ホーム・ページより引用 http://www.moj.go.jp/MINJI/minji07_00222.html

遺産分割前の払戻し制度の創設等の【PDF】は法務省ホーム・ページより引用 http://www.moj.go.jp/content/001278308.pdf